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ユダヤ博物館 |
旅行案内にはユダヤ博物館について「南アフリカで最も古いシナゴーグ(ユダヤ教寺院)が博物館となっていてユダヤ教の歴史や儀式上重要な品物などがある」と簡明に解説してありますが、私は同じ敷地内あるホロコスト博物館を併せて訪ねることでこれらの博物館施設見学の重要性がさらにはっきりすると思いました。
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マンデラさんによる記念の石碑 |
そのように考えたのはヨーロッパ大陸でナチズムによる迫害を受けたユダヤの人々がこの南アフリカの地でアパルトヘイトに遭遇することになるからです。ヒトラーによるホロコストによっておよそ600万人の命が奪われた事実がありますが、20世紀になってヒットラーが政権を握った時期やその以前から、移民としてアメリカなど各地に渡ったユダヤの人々がいます。この南アフリカへはヨーロッパのリトアニアなどからホロコストを逃れてきた移民が数多くいたようです。そしてこの地での法律による移民制限、その後のアパルトヘイトとの時代と20世紀末まで人種をめぐる葛藤を経験したからです。この博物館ではゲットーを生き延びて、この南アフリカに逃れ住んだ人々のビデオ証言を見聞することが出来ます。まさに息をのむ生の声と映像です。私はしばらくの間立ち上がれませんでした。
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ホロコスト博物館 |
このホロコスト博物館には唯一の日本人が紹介されていました。杉原千畝さんです。「Senpo Sugihara(杉原さんが外国人に発音しやすいセンポとして名乗っていたことによる)はリトアニアのカウナスの日本領事であり、ユダヤ難民が極東へ移動するためのトランシットビザを発給した」として簡潔に紹介されています。ユダヤ博物館にはヨーロッパでのホロコストの経験を踏まえてアパルトヘイトに一貫して反対した女性議員としてこちらでは良く知られているヘレン・スズマンさんやノーベル賞作家のナディン・ゴーディマさん、南アフリカ共産党の書記長を務めたジョー・スロボさんなどが紹介されていました。建物は違うけれどもユダヤの人々を支援した人として杉原さんがホロコスト博物館に記されているのは、日本人としてとても誇らしいことだと感じました。
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根付の展示会案内 |
また、予想もしていなかったのですが、ユダヤ博物館では同時に日本の「根付」展示を行っていました。アイザック・カプランさんの収集品で213点が展示されていました。どれも見事な作品で日本でもこれだけまとめて見学できる例は数少ないのではと思いました。そうかこんな分野にも極め付きの日本びいきがいるのかとえらく感心してしまいました。
シナゴーグが博物館となっているとのことですが、ケープタウンでは新しいシナゴーグはできているのでしょうか?それともユダヤ教信者達がイスラエルや以前居住していた国に戻って今はなくなっているのでしょうか? 先日、アウシュビッツを訪ねる機会がありました。聞きしにまさる悲惨さを否応なく実感させるもの。3500年を遡るといわれるユダヤ人たちのディアスポラの歴史は、宗教や経済、法律、ボルシェビズムも含めた政治等々を深く考えさせられるものでした。日本にも何か所かのシナゴーグがあるとのこと。これを機会に所謂「ユダヤ問題」とは何なのかをもっと考えなければならないと思った次第です。
返信削除by h-ishikawa